イエローキッチン

カラダにも社会にもスパイスたっぷりカレー

家庭料理の安心を、プロの味で

イエローキッチンのカレーは、国産の旬の野菜と肉を使って、丁寧に手作りされています。“家庭で作る料理と同じ安心を、プロの味で”がモットーです。スッキリとしたスパイスの深みがありながらも、野菜の自然な甘みが美味しく、リピーターも多数。「キーマカレーなど定番の商品は作り続けながら、お客さまを飽きさせないために年に2商品くらいずつ、新しいメニューを投入しています」と話すのは、代表の長崎由美さん。

「効率よく」ではなく「できることを増やす」

イエローキッチンは、障害のある人たちが自立できるよう支援を行う施設です。ここでのカレーづくりが、彼らが生活でできることを増やすことに直接つながっています。
例えば、初めて火や包丁を使う人がいます。安全に道具を使うにはどうすればいいか、火元の確認はどうすればいいか、仕事を通じて一つひとつ身につけていきます。「もちろん仕事なのでクオリティと量は求められますが、私たちは効率を求めているわけではありません。できることを増やしていって、それで利用者のみなさんの生活がよくなることを目指しています」と長崎さん。
同じ作業を10分でできる人も1時間でできる人も、それぞれのペースで仕事をしています。

楽しくも大変なカレーづくり

ふだんは午前中に材料を切るなど下ごしらえをし、午後には鍋を使った調理。イエローキッチンではすべて生の野菜を使うので、とにかく手間がかかります。一日100食ほどをつくるために一回で炒める玉ねぎの量は、なんと9キロあまり！
「これ、健常者がやることを考えても、大変ですよね（笑）。5分ごとに交代しながら3人がかりで炒めます」。こうして時間とてまひまをかけたカレーだからこそ、そのおいしさが顧客に伝わっているのかもしれません。

自立する、仲間と働く

カレーづくりを通して、利用者の暮らしも少しずつ変わります。料理ができるようになることで、家で留守番ができるようになったり、衛生観念が高まって清潔に一人暮らしができるようになったり。仲間と一緒に時間を合わせて働くことで、メリハリの効いた暮らし方ができるようになった人もいます。

1円でも多くの工賃を！

長崎さんは、就労支援施設の意義として、こうして利用者の暮らしが向上し、1円でも多くの工賃を得られるようになることにこだわります。
「みなさんにも考えていただきたいんです。保護者が先にいなくなってしまった時に、障害のある人達ははたして年金だけで暮らしていけるでしょうか？少しでも自立した生活をみんなが送れるようになることが、障害のある人にとっても社会にとっても大切なことだと思うんです」。

イエローキッチンでは、工賃はすべて利用者が自分のものとして使えるよう、昼食代は無料に。さらに月額の工賃を3万円代にのせたいと事業の見直しも図っています（就労継続支援B型事業所の令和2年度の平均工賃は1万5776円）。
「レトルト製品だけだとこれ以上出荷量を増やせないので、冷凍食品をつくることを視野に入れて、売上を伸ばしていきたいです」とのこと。

お金の感覚を身につける

障害のある人の場合、保護者がお金の管理をしていて、ふだんの生活でお金の感覚を身につけるチャンスがない場合もしばしば。だからこそ長崎さんはイエローキッチンでの仕事を通じて、お金の感覚を身に着けてほしいと考えています。

材料の買い出しに一緒に行く。支払いを自分でやってみる。「モノの値ごろ感って、実際に自分が買い物をしないとわかりません。5500円支払うには、5千円札＋千円札を出す必要があるなど、私たちも経験をして得てきた感覚ですよね。完璧じゃなくてもいいんです、レジの方が教えて下さいますから。お金を通したコミュニケーションができることは、自立の第一歩です」。

自分で働いて得た工賃はできるだけ自分で好きに使えるよう、保護者とも相談しています。「みなさん、趣味や欲しいものがありますから」。

ただいまブラッシュアップ中！

さて、今回「日々のてまひま」では、料理研究家の宮村ゆかりさんによるレシピを、イエローキッチンのノウハウを最大限に活かして商品化しました。「いま試作を経て微調整中です。完成度を上げておいしい商品に仕上がりそうなのでご期待ください」と長崎さん。ぜひこの機会に、日々のてまひまカレーをご賞味ください。