わたし達が知っている「しごと」にはちょっとゆかいな物語がある。日々のてまひまは、障害のある人が作った良いモノとそのストーリーをお届けします。
kiitosは、「bean to bar」と呼ばれる、カカオ豆からチョコレートを作り、さらに包装から販売までの全行程を一貫して行なうチョコレート工房です。ペルーやベトナム、コスタリカなど、それぞれのカカオ豆の産地の風味を活かしたチョコレートには、さらにスムースとクランチという食感の違うタイプのものが準備されており、チョコレートの味わいをさらに楽しめるようになっています。台形の特徴あるフォルムやスタイリッシュなパッケージもあいまって、本格的なチョコレートを食べたい!という人たちの間で人気急上昇中です。
kiitosのチョコレートを作っているのは、就労継続支援B型事業所Lankaに通う障害があるメンバーたち。代表の大山真司さんは、みんなで作れる商品を模索していた時に、広島にあるbean to bar工房「ウシオショコラトル」を訪ねました。するとそこには大声で歌いながらチョコレート作りに勤しむ人たちの姿が。「まるでLankaみたいだな、と(笑)。私自身チョコレートそのものが好きだし、がぜんイメージが湧いてきて『作り方を教えてもらえませんか?』とお願いしました」。
こうして始まったkiitosのチョコレートづくり。道のりは平坦ではありませんでしたが、「福祉事務所が作っているから」ではなく「おいしいから」購入してくれる顧客を獲得してきました。
製造の現場では、メンバーそれぞれが得意な仕事を担当しています。自閉の傾向がある瀬戸口さんは、豆をローストして細かく砕いてカカオニブを作る工程で、不純物を一つひとつピンセットで取り除く作業を担当。大山さんから見ても大変な作業に集中します。「彼はベトナムのカカオ豆の香りが好きなんですよ。でももちろん他の豆の作業の日だってあります。で『すみません、今日はペルーをやりたいんで…』と伝えると、しばらく考えて『分かった、持ってこんね』って言ってくれるのですが、それがまるでいぶし銀の職人の風情で。思わず『あざます!』って」。大山さんは笑います。
折り紙が得意な人は包装の作業を、パソコンが得意な人は受注や発注の仕事を、絵が得意な人はパッケージのデザインを。すべての工程にメンバーが携わって、kiitosのチョコレートは作られています。
ある時期、メンバーたちの雰囲気がよくないことがありました。大山さんはメンバーに「kiitosというのは、フィンランド語で『ありがとう』という意味だよ。ケンカして作られたチョコレートでは、ありがとうの気持ちは伝わらないんじゃない?」と話したそう。
すると彼らの中で、チョコレート作りに向かう姿勢が変化。大山さんは、チョコレートの向こうにいる人の姿を想像できるようになったように感じています。
いまでは販売の際の説明もメンバー自身が行い、チョコレート作りのワークショップの講師も彼らが担当します。中でも中心的に活躍しているスタッフに、「工場長って名乗ったら?」と提案した大山さん。返事は「それはイヤだな」。ところが他のメンバーから「だったらチョコ長になれば?」と言われ、「チョコ長だったらやりたい」との返事。これまであまり社会とうまく折り合うことができず、人間不信気味だったというチョコ長ですが、いまでは責任をもってチョコレートづくりに携わっています。
kiitosのチョコレートが売れれば、メンバーに支払われる工賃もアップし、自由に使うことができるお金も増えます。もともとブリーチをしてピンクやブルーに髪を染めていたチョコ長は、質の良いブリーチ剤を使えるようになり、「お肌にも地球環境にもいい」と喜んでいます。
kiitosの工房は、鹿児島県鹿屋市の海を見渡すことができる気持ちのいい場所にあります。廃校となっていた小学校に、新たな息吹が吹き込まれ、ここからチョコレートを中心とした、新たな動きが生まれています。カカオニブに地元のレモンやビワ茶を加え、クラフトビールを作っている友人と一緒に作ったのが、カカオのパンチの効いた「カカオコーラ」。カカオ豆の殻を使って布を染め、それをユニフォームに仕立てるプロジェクトも進行中。
大山さんらスタッフもメンバーも、これらの動きを楽しんでいます。「彼らと一緒だからできることをやって行きたいんです。メンバーの中に外語大学出身で通訳になりたかった人がいるんです。そろそろ海外に行けるようになりそうなので、カカオ豆を探しに行くのに、彼には通訳としてついてきてもらいたいな」。
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